第20回広島がんセミナー・第4回三大学コンソーシアム県民公開講座

「がん患者のQOLの向上を目指して」

平成22年10月30日(土)

第20回(財)広島がんセミナー・第4回三大学(鳥取大学・島根大学・広島大学)コンソーシアム県民公開講座「がん患者のQOLの向上を目指して」をテーマとして広島国際会議場で行なわれた。
講師は、内富 庸介 先生 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科精神神経病態学教室教授、 浜中 和子 先生 乳腺疾患患者の会「のぞみの会」会長、そして、石口 房子 先生 広島・ホスピスケアをすすめる会 代表 の3名演者された。尚、三大学関係者、広島県がん診療連携拠点病院関係者、一般県民を含めて約211名の参加。
今年の県民公開講座の開催は20回目であり、平成22年9月には財団が平成22年度日本対がん協会賞(団体の部)を受賞した記念すべき年である。

演題:
心のケアの側面(精神腫瘍学)から

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
精神神経病態学教室教授
内富 庸介 先生

心を端的に言えば、「知・情・意」。「知」は知識、「情」は感情を表します。「情」は事物の良悪、快か不快かの価値判断に重要な役割を果します。特に生命が危険にさらされた時には恐怖、驚愕でもって警告します。「意」は意思。インフォームド・コンセント(説明と同意)のプロセスには、判断材料のための適切な「知」が提供され情報不足が補われることが急ぎ必要ですが、それだけでは十分ではありません。特に生命に関わる重大な情報が伝えられる場合は、「知」と「意」の間に気持ちの準備ができてはじめて、心構えとなります。(広辞苑:心にかけて待ち受けること。心の用意。覚悟。心がけ)。
2007年4月にがん対策基本法が施行され、がん医療のはじめから心と体の緩和ケアが推進されることになりました。がん予防から遺族ケアまで、心のケアは広く生活の質を改善させる手だてとして期待されていますが、まったく不十分です。
精神腫瘍学は、精神Psychoと腫瘍学Oncologyの造語である。1984年の国際精神腫瘍学学会の創設以来、(I)がんが心に及ぼす影響と(II)心や行動ががんに及ぼす影響について精力的に調べられてきましたが、特に(II)に関してはまだ十分ではありません。つまり、こういう心構えをするとがんに罹りにくくなった、がんの進行を遅らせることにつながったという結論は得られていません。(I)に関しては、がんに罹ったときの心構えとして、心の反応に関する知識、心の対処法について、集積された国内外の代表的知見が蓄積してきました。
本公開講座では、がんを抱えたときの患者・家族の心構えとして最新の知見をご紹介し、皆様と一緒に考えたいと思います。

うちとみ  ようすけ
内 富 庸 介 先生

 略歴
 
1977(昭和52)年  3月
 山口県立徳山高等学校卒業
1984(昭和59)年  3月
 広島大学医学部卒業
1988(昭和63)年  8月
 国立呉病院・中国地方がんセンター精神科医員
1993(平成  5)年10月
 広島大学医学部神経精神医学教室講師
1996(平成  8)年  4月
 国立がんセンター研究所支所精神腫瘍学研究部部長
2005(平成17)年10月
 国立がんセンター東病院臨床開発センター
        精神腫瘍学開発部長
2010(平成22)年  4月
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
        精神神経病態学教室教授
専門
精神医学、精神腫瘍学、神経科学
ライフワーク
生命の危機に伴うストレス対策とその機序解明、そしてその教育研修を使命とする。
主な学会・社会活動など
日本サイコオンコロジ−学会理事、日本総合病院精神医学会理事、日本緩和医療学会評議員、日本癌治療学会評議員、日本学術会議連携会員
主な著作:
1. 岸本葉子、内富庸介(著):がんと心.文春文庫.東京.2009
2. 内富庸介:心の支援対策の第一歩:がん医療これからどうなる。日本経済新聞社編.東京2008
受賞:
・2003年 2月 田宮賞、国立がんセンター
・2006年10月 Bernard Fox Memorial Award, 国際サイコオンコロジー学会

演題:
がんになっても幸せな毎日を!

乳腺疾患患者の会「のぞみの会」会長
浜中 和子 先生

ある日突然がん患者になった時、それをどう受け止めて、どう立ち向かっていけばいいのか、「がんになったら7カ条」を示して考えたい。
1)がんを受け止める
がんから逃げない。それらを乗り越えて、がんという事実を認めたところからがん患者としてスタートする。
2)がんを知る(がんについて勉強する)
情報源: がん関連の本、雑誌、体験記、新聞、インターネットなど (情報の選択)
がん対策情報センター(国立がんセンター)、患者会主催の講演会、勉強会。
3)がん友達を作る
患者会へ参加する。がんサロンを活用する。
共通の体験による共感。孤独感、うつ状態の改善。
4)自分が主治医になる
自分の身体について主体性をもつ。自分のカルテを作る(データーを集める)
自分で治療方針の決定ができるように。(治療法、病院の選択、終末期をどう過ごすか)
5) 目標を持って生きる(夢を持って生きる)
仕事を続けること。自分のするべき事を継続する。自分が一番したいことをする。
6)決してあきらめない(のぞみを持ち続ける)
がん=死ではない。再発=死ではない。
7)人生を生きなおす
がんになり死を自覚した時に、新しい価値観が生まれる。
生きている幸せ、あたり前の有難さ。一日一日を大切に生きる。

はまなか かずこ
浜 中 和 子 先生

学歴
 
昭和 51年 
広島大学医学部医学科卒業>
 
放射線医学総合研究所理事
 
千葉大学医学部連携大学院教授
 
群馬大学医学部教授(併任)
  職歴
 
昭和 51年 
広島大学医学部付属病院医員(研修医)就職
昭和 53年 
広島鉄道病院皮膚科医員就職
昭和 54年 
広島大学医学部皮膚科助手就職
昭和 55年 
東洋工業東洋病院皮膚科副医長就職
昭和 59年 
尾道総合病院 皮膚科部長就職
昭和 63年 
同主任部長就任
平成  3年 
広島総合病院皮膚科主任部長就任
平成  7年 
浜中皮ふ科クリニック開設  院長就任
  免許・資格
 
昭和 57年 
皮膚科専門医取得
平成 元年 
医学博士号授与
  所属学会
 
      日本皮膚科学会      日本臨床皮膚科医会      西日本皮膚科学会
      日本形成外科学会  皮膚アレルギー学会
  所属グループ
 
 
乳腺疾患患者の会「のぞみの会」(会長)
NPO法人がん患者団体支援機構(副理事長)
思いやりの医療を考える会 (世話人)
緩和ケアを考える会・広島
広島・ホスピスケアをすすめる会
  業績
 
著書 
「のぞみを胸に」(ガリバープロダクツ  2004年)
論文 
「患者発の医療改革」2008年度医療白書 (日本医療企画 2008年)
論文 
がん治療最前線  p.6-10 vol.65 2009
「考えよう、私の町のがん医療 第4回がん患者大集会アンケート結果報告」
NPO法人がん患者団体支援機構 第4回がん患者大集会実行委員会 浜中和子
エッセー 
「がん患者大集会  全国患者・家族のメッセージ」(分担執筆/三省堂/2008年)
発表 
日本ホスピス在宅ケア研究会  (2009年7月)
「考えよう、私の町のがん医療 第4回がん患者大集会アンケート結果報告」

● 診療のかたわらがん患者支援活動、ホスピスケア活動に奔走している。

演題:
自分らしく生きるために

広島・ホスピスケアをすすめる会代表
石口 房子 先生

15年前、“がん電話相談”を始めた頃、がん患者さんやそのご家族からは、「痛みが取れない」「患者には病名を知らせていない」「主治医と上手く話せない」「家に帰りたい」「ホスピスはどこにあるのか」等々、切実で苦悩に満ちた相談が寄せられました。とても“自分らしく生きる”環境にはありませんでした。
年月を経て、心身の痛みを緩和することの重要性が説かれ、そのための医療技術も目覚しく進歩しました。2007年には『がん対策基本法』が制定され、医療従事者も市民の意識も、やっと“あるべき姿”の方向に歩み出した、と感じています。
“あるべき姿”とは、どのような時でも個人の意思が尊重され、自分らしく生きる ということです。 例えば、がんと診断された時、治療の選択、療養場所の選択、苦痛の緩和、QOL(生命の質)の向上等、がん患者さんの頑張りだけでは成し得ることは困難です。家族や医療チーム、在宅ケアチーム等が専門的な知識をもって関わっていくことが必要となります。
その時に最も大切なことは、がん患者さん自身が自分の希望や意思を家族や医療関係者に伝えることです。医療関係者がいくら本人の意思を大切にしようとしても、本人の意思が明確でなければ、周囲の意見に左右されてしまいがちです。
日頃は、“自分らしく生きる”?とかは、あまり考えないかも知れませんが、もしがんになった時は、しっかりと自分の生き方を考える機会になると思います。その時は一人で悩まないで、患者会やがんサロン、研修会等々に参加して、知識や情報を得ること、また、仲間の生き方を参考にされることをお勧めします。
そして、元気なうちに、病気やがんになった時に助け合う仲間も創っておかれるといいでしょう。公的なサービスには限界がありますので、互助グループの創設も困った時には役に立つのではないでしょうか。その時は、気の合う仲間であり、年齢差のあるグループの方がいいでしょう。
がん治療が進歩し、患者の権利が法律で守られるようになりましたが、“自分らしい生き方”は、自分で創っていくしかありません。
そのためにも必要な情報や人材が、地域格差なく提供されるように、もっと整備されなければならないとも感じています。地域の中に必要な医療や制度は、声を出しあい、“自分らしく生きられる社会”を創っていきましょう。

いしぐち ふさこ
石 口 房 子 先生

  履歴
 
1976年 
兵庫県立総合衛生学院  保健学科卒業
1982年 
1982年 広島市内の病院にて13年間訪問看護、在宅ホスピスに取りくむ
1995年 
「広島・ホスピスケアをすすめる会」発足  代表
1996年 
YMCA訪問看護ステーション・ピース開設  就職
訪問看護師として在宅ホスピスの実践、普及を目指す
1998年 
『広島にホスピスを求める会』発足
広島県立病院と広島市民病院に緩和ケア病棟の設置請願署名
2000年 
介護支援専門員資格取得
2002年 
YMCA訪問看護ステーション・ピース  管理者就任
2003年 
「日本ホスピス・在宅ケア研究会」理事就任
2004年 
2004年 第13回 日本ホスピス・在宅ケア研究会in広島 大会会長
2008年 
2008年 広島県訪問看護ステーション協議会 理事就任
2009年 
2009年 NPO法人 がん患者団体支援機構 理事就任
  受賞
 
 
第38回広島県医療功労賞 受賞
(読売新聞社賞・厚生労働大臣賞・広島県医療功労賞)